《クリックで拡大》 西 条 山 引 返 之 図 Next次を見る

一登斎芳綱 大判三枚続 刊年:弘化四年〜嘉永五年(1847〜1852) 版元:蔦屋吉蔵 絵師紹介

 「西条山引返之図」という外題であるが、画面は前面に謙信・信玄一騎打ちが描かれ、後方に主題の妻女山攻撃の武田軍の主力が描かれている。千曲川を渡り上杉軍の背後に迫ろうとしている場面だ。一気に決着を付けようとする謙信に対し、主力の到着を待ち悠然と受け流す信玄、両雄の動きの描写が印象的だ。
 千曲川の渡河に筏が描かれている。1995年に発見された川中島合戦屏風(長野県立歴史館所蔵)にも同じように筏が描かれているが、実際の
状況を考えると、とても筏を組んでいる余裕などなかったはずだし、この地区には「雨宮の渡し」の他に下流にいくつかの浅瀬(渡し)があった。おそらく川中島合戦を伝える軍記本にこういう筏を使う記述があるのだろう。それを下敷きにしている絵師が屏風や浮世絵に描くのは必然である。
 絵師・芳綱は国芳門下。生没年は不詳で、作品も極めて少ない。だが、画格はけして低くない。本図を見てもわかるように、画面の構成力、人物描写も優れている。川の流れの表現も巧みである。

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